長期耐用型集合住宅のビルディングシステムの開発

term:

2008- (ongoing)

building type:

residential building

research type:

国内共同研究

outline:

集合住宅のビルディングシステムを,スケルトン(構造躯体・共用設備配管など)とインフィル(内装・住戸内設備など)の2つのサブシステムに分類し,インフィルの更新がしやすいように計画された集合住宅は,SI住宅と呼ばれていますが,SI住宅は,集合住宅の長寿命化につながる技術として,大きな期待を集めています.

既存のSI住宅は,スケルトンとインフィルを空間的に分離することに主眼が置かれていますが,結果として,SI住宅の基本的なイメージは,「ユニヴァーサルな純フレーム構造のスケルトン」と「躯体の制約なく計画されるインフィル」に収斂しつつあります.しかし,単なるユニヴァーサルな躯体は,インフィル計画の手がかりに乏しく,住まい手がインフィル改修後のイメージを想像しづらいため,かえってインフィルの適切な更新を阻害しかねませんし,何より,スケルトンの基本イメージが固定化してしまっていることは,SI住宅技術開発の閉塞感につながってしまっています.

現在までに,SI住宅に関する研究をいくつか進めてきましたが,そうした研究を通じて,SI住宅がそのメリットを存分に発揮するためには,スケルトンとインフィルが空間的に分離されていることよりも,むしろ両者の性能的な役割分担が明確になっていることが重要であるとの考えに至るようになりました.

このようなSI住宅の捉え方は,従来のSI住宅とは全く異なる技術イメージにつながる可能性が高く,実施を見据えながら,新たなビルディングシステムの開発を行っています.

中層壁式鉄筋コンクリート造集合住宅の
構造計画の変更を可能とする改修技術の開発

term:

2005- (ongoing)

building type:

residential building

research type:

国内共同研究

outline:

日本の集合住宅の発展期である高度経済成長期には,中層の壁式鉄筋コンクリート構造の集合住宅が大量に建設されました.いわゆる団地として計画された集合住宅も,その多くでこの構造形式が採用されています.

壁式構造の集合住宅は,住戸内に多くの耐震壁が計画されているため,現行の基準に照らしても,地震に対する耐力が十分である場合が多いのですが,一方で,空間が小割りにされているため,現在の住要求に必ずしも適合した空間構成にはなっていません.これらの集合住宅では,建設当初,核家族が居住することが想定されていましたが,現状では,単身者や夫婦のみで住まわれていることが多く,耐震壁で細かく分割された空間は,こうした居住者の生活を大きく規定してしまっているのです.

このような問題意識に基づき,壁式構造の集合住宅の耐震壁を撤去した上で,必要な場合は補強を加えることによって,耐震性能を保ちながら,その空間構成を現代的なニーズにあわせて改変する技術の開発を行っています.
そもそも,こうした問題意識は,個人的に壁式構造集合住宅の住戸改修計画を行った経験に端を発しているのですが,現在では,建築構造研究者や実務家との共同研究に発展し,開発した技術の有効性を構造実験により検証するなど,多様な研究活動として展開しています.

階段室型集合住宅へのエレベータ設置技術の開発

term:

2004-2007

building type:

residential building

research type:

国内共同研究

outline:

高度経済成長期に大量に建設された中層集合住宅は,住宅における機械換気技術や空調技術が未発達であったこともあり,自然通風と住戸のプライバシーを両立させるため,アクセス形式として階段室型が採用されることがほとんどでした.しかし,これらの集合住宅にはエレベータが備えられていないことが通常であり,また住民の高齢化も進んでいるため,エレベータの設置が求められています.

階段室型集合住宅へのエレベータ設置技術は,既にいくつか提案されていますが,いずれも一長一短の問題を抱えています.たとえば,階段室単位でエレベータタワーを増築する方法では,エレベータが階段室の踊り場に着床するため,半階分の上り下りが発生し,完全なバリアフリーを実現することは困難ですし,一方,住棟に共用廊下とエレベータを増築し,完全なバリアフリーを実現しようとする方法では,工事が大規模となり,また意志決定を行う住民の数も多数となってしまうため,事業の進行が難しくなる場合があります.そこでこの研究では,既存の階段を撤去し,エレベータタワーと階段が一体化されたユニットを増築することで,階段室単位で完全なバリアフリーを実現する改修システムの開発を行いました.

開発にあたっては,実際の階段室型集合住宅への適用実験も行い,建築構造を専門とする研究者と協働して,試作実験棟の基本設計・実施設計・現場監理も担当しました.

マスハウジング期に建設された
集合住宅ストックの活用手法に関する研究

term:

2001- (ongoing)

building type:

residential building

research type:

国際共同研究・国内共同研究

outline:

高度経済成長期には,公的な主体の主導により,大量の集合住宅が建設されました.この時期は"マスハウジング期"と呼ばれていますが,マスハウジング期に建設された集合住宅は,住戸の面積が小さく,設備機器も陳腐化しているなど,住宅としての性能が低く,これに加えて,画一的な計画がなされているため,住民の一斉高齢化,コミュニティの機能不全など,複雑な問題が引き起こっています.こうした住宅を,改修などにより,現代の住要求に適ったものに改める手法の開発・提案を行っています.

こうした問題解決型の研究は,その性格からして,調査研究になりづらく,論文的なアウトプットに繋がりにくいのが実情ですが,いくつかの提案は,改修技術の開発研究として展開しています.

また,マスハウジングは,戦後復興や,都市の肥大化に付随する郊外の発展などを背景として,日本ばかりでなく,ヨーロッパやアジア諸国でも同時期に起こった現象であり,いずれの国においても,マスハウジング期に建設された集合住宅には共通の問題が認められます.最近では,大韓住宅公社(韓国)の保有する集合住宅の活用手法のコンサルティングをするなど,研究活動は地理的にも広がりつつあります.

集合住宅用インフィルシステムの開発

term:

2001-2004

building type:

residential building

research type:

国内共同研究

outline:

集合住宅用の間仕切り壁・置床を統合した内装システムの開発を行いました.このインフィルシステムは,東京都立大学 教授(当時)深尾精一先生の発案による,壁がちとも床がちともつかない,大変独創的なシステムで,間仕切りの移設性を高めながら,移設性の高い間仕切り壁で問題となりがちな,間仕切り壁の安定性や遮音性を損なわない設計となっています.

この研究では,セルフビルドにより,開発したインフィルシステムの実大試作実験も行いました.自身の開発研究への興味のきっかけともなった研究です.

SI住宅におけるインフィル工事の施工調査

term:

2001-2002

building type:

residential building

research type:

国内共同研究

outline:

集合住宅は様々な部材・部品から成り立っていますが,建物全体をトータルシステムとして捉えると,個々の部材や部品は,トータルシステムを構成するサブシステムと捉えることができます.これらのビルディングサブシステムを,スケルトン(構造躯体・共用設備など)とインフィル(内装・住戸内設備など)に分類し,両者が物理的・空間的に混在しないように計画された集合住宅を,SI住宅と呼びます.

SI住宅においては,インフィルがスケルトンから受ける物理的・空間的制約が小さくなりますので,通常の集合住宅に比べて,インフィルの更新は容易になると考えられます.したがって,SI住宅においては,インフィルの更新が活発に行われることが期待されますが,この研究では,在来構法によるインフィル,施工性の向上が目指された構法が採用されたインフィルなど,性格の異なる3つのインフィルの施工調査を行い,構法別の施工性や,工程上の問題点などを分析しました.

大学院修士課程を卒業したばかりに行った研究で,はじめて建築の現場に通うことになったのですが,現場のベーシックな知識を学べたという点でも,その後の活動にとても役立っている研究です.

集合住宅のスケルトンのキャパシティに関する研究

term:

1999- (ongoing)

building type:

residential building

research type:

個人研究

outline:

集合住宅の住戸計画は,スケルトン(構造躯体・共用設備配管など)の設計のされ方に大きく規定されます.一方で,長期に渡って快適に住まわれる集合住宅を実現するためには,なるべく住戸計画を規定しないスケルトンであることが重要です.この,スケルトンが住戸計画を規定する度合いを「キャパシティ」と名付けた性能概念として捉え,これを評価する方法論を確立することを目的とした研究です.

キャパシティの評価とは,すなわち,任意のスケルトンにおいて実現可能な住戸の可能態を明らかにすること同義ですから,関連する領域は,建築構法ばかりでなく,設計方法,施工法,法制度,人体感覚など多岐に及びます.したがって,難しくもありますが,また同時に大変興味深いテーマでもあり,この研究が自分の建築的な考え方の基盤の一つとなっていることは確かなようです.

現在は,スケルトンや住戸計画の特性をパラメトリックに表現した上で,パラメータ間の影響構造を統計的に定量化するというアイデアに基づき,研究を進めています.