東京都心部に立地する2世帯住宅です.周辺には,年を経た小さな木造家屋が密集する一方,敷地西側には,幅員22mの環状四号線の計画が進んでいます.
この住宅は,中2階を持つ2階建てとして計画されており,親世帯のための1階には,入隅が切り欠かれた小さなヴォリュームを分散させ,襞状にくびれた大きな空間を形成しています.また,子世帯のための2階には,大きなボリュームを与えていますが,床面からは,1階にばらまかれた小さなヴォリュームが高さを変えながら顔を出しています.
上下階のボリュームは互いに貫入し,1階では垂壁として,2階では腰壁として現れていますが,この垂壁と腰壁が,広々としたそれぞれの空間に,生活のための手がかりを与えています.
周囲のスケールとあわせるように,外観は小さな建物が寄せ集まったような姿をしていますが,内部から見れば,上下階とも,広々としたワンルーム的な性格を帯びています.外部からは比較的閉ざされたようでありながら,内部空間には,1階・2階とも,性格の異なる開放感が溢れています.
構造形式は,木造在来軸組工法が採用されています.地上階の小さなボリュームは,2辺に大きな開口が設けられており,一つ一つは構造的に自立することができませんが,2階のボリュームが貫入し,それぞれを連結することによって,互いに寄り添いながら構造が成立しています.(文責:門脇耕三)
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